愛しているなんて言えない
第1章 変人
明るい光の元で、カチャカチャと器具の音が鳴り響く。

耳を澄ませば、ピッピッと言う電子音。

ここで聞こえるのは、無機質な音だけ。

唯一、命を感じられるのは、目の前の血が通った臓器だけ。


私はその中から、患者の体を巣くっている塊を取り出した。

「うん。これで全部取れたわ。後は縫い合わせるだけ。」

細い糸に縫い針。

それで一つ一つ丁寧に、縫合していく。

幼い頃から、手先だけは器用だった。

母から教えてもらった手芸が、唯一の趣味だった。


いつ頃からだろう。

幸せな専業主婦から、幸薄い外科医に夢が変わったのは。


「お疲れ様でした。」

「お疲れ様。」

助手達や看護師に後は任せて、私は手術室を出た。

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