輪廻ノ空-新選組異聞-
「剣道をしろ」

と、無理矢理一年間習わされた事がある。古武道では防具をつけて叩き合ったりしない。その古武道の神髄を味わうには、剣道で一度対戦してみるといい、という論理だったのよねー。ちょっと興味があったから、ちょっとだけ、ということでやってみた。

それが役立つ日がくるなんてー!

そう、私は今…
面、胴、籠手をつけさせられて沖田さんと向かい合って蹲踞中。久々の竹刀だけど…がんばらないと…!

「始め!」

の声と同時に立ち上がり、面金越しに沖田さんの顔を見た。




逃げたい……。



な、ナニコレ!
こんなの初めてだ。
本気で怖い。
この人……強過ぎるよ。

殺気立ってる訳でもなく、普通に構えてるだけなのに…。う…動けない。打ち込める気がしない。一瞬で負けるよ。

「おまえは今沖田だ」

お父さんの言葉がよみがえってきた。
天才だと言われて、沖田総司みたいだ、と言われてた。
だけど……この目の前の本人と私とじゃ格が違い過ぎるよ……。

沖田総司。

天才の人。

私だって…嫌だったけど…稽古は真面目にしてきた。誰よりも技を飲み込み会得するのは早かった。だから、気迫で負けてちゃいけないんだ。

ギュッと唇を噛みしめ、大きく息を吐いて気持ちを入れ替える。
全部を出し切るんだ。
大丈夫。
今朝だって…ホテルの近くの公園で朝練したじゃん。
いつもの通り、動けるよ、蘭子…じゃなくって、丸。
蘭丸!!
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