輪廻ノ空-新選組異聞-




河原に倒れ込んで、荒い呼吸だけが響いてた。

「あっ」

坊やは静かだけど、と慌てて起き上がって、隣の小さい体を揺する。

「大丈夫?」

水を沢山飲んだ筈、と膨らんだお腹を押すと、口から水が溢れた。

息は!?

と、思ったら、水に咽せながらゲホゲホと言い出して、息をしているのが分かった。

「は…良かった…」

それと、あの浪人!

見たら…

大の字になって横たわったまま、わたしを見てた。

「おんしも無事がかね」

「はい!ありがとうございました」

答えながら、相手の顔をマジマジと見てしまった。

会ったことある…かも。

言葉も方言だし…

会ったというか、見た、が正解かな…

「にしても、勇敢なおなごじゃのう~」

「は!?」

お、おなごって…!?

慌てて体を見下ろしたけど、ズブ寝れになった以外は、脱げても、肌蹴ても、透けてもいない。

「ぬおぉ~。濡れ鼠じゃあ!」

浪人は叫んで突然脱ぎだした。

「一張羅じゃのにのぅ。下帯までぐっしょりぜよ」

…っあ!!

「ぜよ」って土佐弁!!

「坂本龍馬…!!」

「おっ、なんじゃ。おんしゃ、わしを知りよるがかね」

本人なんだ、間違いなく!!

大河ドラマで福山の雅治サマが演じることになったから知っただけなんだけどね…。

父さんに聞いたら「敵ながらアッパレ」とか言ってた。

「敵っ!?」

思わず叫んだら声がひっくり返った。

「敵?」

坂本さんも小首を傾げながら言って、着ていた単衣を絞って、わたしを見た。

「得体の知れないわたしに、簡単に坂本龍馬って認めてちゃいけないだろ…!!」

「おなごに得体も無体もないじゃろ」

「おなごじゃなくて!わたしは新選組の隊士だ」

坂本さんは目を丸くした。

「そいで、おのこのなりしちょるんか!!」

不憫じゃのぅ~と、坂本さんは泣き声になった。
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