輪廻ノ空-新選組異聞-
第二章 新しき日々

怒濤

「一番隊集合ー!」

招集がかかると、反射的に走って玄関に向かうようになった。
慣れって恐ろしい。野獣みたいなムッサイ男ばっかの中にもほとんど慣れた…と思う。

「鉢巻き、鉢巻き」

馬に慣れなきゃと思って、馬小屋にいた私は、招集号令と同時に、一番隊の平隊士部屋に大急ぎで戻って自分の荷物入れから鉢巻きを取り出す。

わたしの、自分の時代からの所持物。

腕時計
財布
ケータイ
ジャージ
スニーカー
稽古着

どれも怪しまれるものばかりだから、風呂敷に包んで、行李…というふた付きのカゴみたいなのにしまってる。腕時計なんてデジタルだよ。見つかったらヤバイ!しかもしっかり動いてる。さすがはショックレジストが売りなメーカーのだけあるよ。流石にケータイは充電が切れてしまった。


私の時代から身につけてきたものは、風呂敷で包んで一番底に入れた上から、このバクマツで日常着にしているものとかを詰め込んで、目に入らないように封印。

衣紋掛けから羽織…そう、ドラマとかでかの有名な…!エメラルドグリーンっぽい水色…じゃなくって、浅葱色に袖と裾がギザギザに染め抜かれた羽織を取って着て、鉢巻きは玄関で巻けばいいし、とにかく玄関までダッシュ!

「遅いっ!」

と、沖田さんに怒鳴られた初めての巡察の時の集合時。余りの鋭い言いっぷりにビビって以来、猛ダッシュ。今日は…うっかり馬小屋に居過ぎちゃったよ。

で、驚いた事に、私は相当足の速い事が判明。
身長が高いし、足が長いってのもあるんだろうけど(バクマツの人は小柄な上、足が短いよ)、腕を振って走るってのは、この時代の人にはない習慣みたい。

今日も複数追い越して、玄関に到着したのは3番手ぐらいだった。ここで油断してちゃいけない。鉢巻き巻いて、準備準備。刀もちゃんと腰にあるね。

「では、出立します」

沖田さんが点呼をして、屯所を出発。
巡察ってのは、京都の町中をパトロールするって事らしい。らしいっていうのは…パトロールの事ですかって聞いても通じなかったからね…。やってる行動で自分判断。

門を出たところで、芹沢局長と鉢合せた。

「蘭丸、戻ったら島原まで供をせぃ」

と、この偉そうな局長は、いつもこうだ。

「嫌です」

と、いつもの返事を返した。



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