輪廻ノ空-新選組異聞-



「土方さんが、何ですか」


土方さんの名前を出しただけで、言葉を切った沖田さんを促すように、わたしは顔を覗きこんだ。

「……飲ませたんです」

「飲ませた?」

「はい」

沖田さんは目をそらして。

「あなたに、石田散薬を」

「はあ…」

それがどうしたんだろ…と思いながら、石田散薬の飲み方を思い出した。

「…っ」

わたしが口にするより先に、沖田さんが言葉を継いでた。

「日本酒で、口移しに」

口移し…!!

これで納得だ。

さっきお酒臭かったわたしを心配した沖田さんがどれだけ飲ませたのか聞いた時…

土方さんは

「三口」

と答えて。

沖田さんは

「三回も」

って問い返してた。


「三回…口移し…」


思わず呟いてたわたしに、沖田さんは言った。

「だから、また…悋気を起こしてしまって…土方さんの痕跡を消したいと」

ちょっと小声なのは、ここのところ頻繁に焼き餅を焼いてるからなんだろうなって…

ちょっと微笑ましかった。

でも…

口移し…

全く覚えてないけど…

でも、逆に沖田さんがわたし以外の誰かに口移しされたら…




……

………!!

嫉妬で爆発しちゃうよ!!
< 238 / 297 >

この作品をシェア

pagetop