輪廻ノ空-新選組異聞-
厳しい面持ちで帰って来た土方さんの指示で、新選組は壬生の屯所に戻った。

洛外の壬生は出陣した時と変わらない、壬生菜畑の広がる風景が広がってた。

嬉しいけど複雑で…。

焼け出されてしまった人は万単位みたいで…。

土方さんの強張った表情が、被害の大きさを物語ってた。



全員が道場に集められた。

幹部が前に。
平隊士達が隊ごとにずらりと整列して。監察方であるわたしたちは、壁際に並ぶ。


「皆、ご苦労であった。戦闘への参加が無いままの収束となったのも、偏に新選組の勇名が轟いていたからこそである」

近藤局長の労いの言葉に、少しだけ張り詰めていた空気がゆるんだんだけど…

「長州勢は大敗だ」

近藤局長の言葉が終わって口火を切った土方さんの状況報告に、また空気は固くなった。

「長州に加担していた公卿達も、敗走する長州勢と共に都落ちしたそうだ」

久坂玄瑞も戦死したと言われて、大坂で少しだけ会話をした、どこかぶっきらぼうながら、真摯な態度でいた姿を思い出した。

人の命のあっけなさに、改めて愕然とする。

わたしも人を斬り、命を断って…自分も同じ危険と隣り合わせな訳だけど…

生き抜くことの大切さを噛み締める。

「出火の原因は情報が錯綜してやがる。長州側が放った大砲とも、幕府側が長州勢に勢いを与えてしまわねぇうちに戦を終わらせたくて放った火とも言う」

どっちにしろ、完全に町衆は巻き添えだ。

「その大火の中…」

土方さんは益々眉間のしわを深くして、厳しい顔になった。

「京都町奉行所が、六角獄舎の囚人が大火で焼け出されて逃走する前にと、ほぼ皆斬り殺した」

道場がざわついた。

「既に新選組がやったという噂になっている」

はぁっ!?

わたしは思わず声に出しそうになってた。

洛中にいなかったんだから不可能なのに!!

「池田屋で捕まった奴らが真っ先に殺されちまった為だと思う」

土方さんは苦々しい様子で言った。

今後、今まで以上に町中では暴言を浴びるかも知れねぇが、堪えてくれ、と土方さんは続けた。
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