輪廻ノ空-新選組異聞-
料理を覚えたくなったのは単純な理由。
滋養のつく食べ物を、大切な人たちに食べて貰いたかったから。

だってさ…みんな酷いよ、食生活!
美味しい食材が沢山あるんだし、料理を覚えて、栄養沢山とって貰って、病気知らずになって貰いたい。特に…沖田さん。

労咳って…どんな病気なのか…実はこっそり山南さんに聞いたのだけど…。胸を患う、この時代では珍しくもない病気で…。でも不治の病。沢山血を吐いて、痩せてきて、段々胸だけじゃなくて全身に病が回るんだって…。

滋養をつけたらいいんだって言われて…ほんと、単純。

でもあんまり頻繁に厨に立ってると、男が料理ばっかりしてるな、何のために新選組に入ったんだって苦情が来るかも…と、思って控えてるんだけど…。

お正月の準備ぐらい頑張ってもいいよね!

と、張り切ってみた。

「煤払いも無事終わりましたし、除夜の鐘が鳴り終わるまでに出掛けましょう」

沖田さんはそう言って、座りっぱなしの私の手を取って立ち上がらせた。

「……ん、剣術の稽古も怠っていないようですね」

マメだらけの手。
現代にいた時には考えられないぐらい稽古に励んでる。

……生き抜きたいから。
ただひとえにその気持ちから。
ずっと、ずっと、沖田さんや…皆の傍で生き抜きたい。
足手まといにならず、一人の武士として。

あの年表を頭に入れてから、本当に私の覚悟は固まって、胆も座った。
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