輪廻ノ空-新選組異聞-
「あ、でも…」

わたしの事、おなごだと思ってないってことか…!と思わず呟くと、沖田さんもちょっと沈黙して。

「いえ、そうならば、先程のような心配はしませんよ」

「でも…沖田さんはおなごが苦手なんですよね?」

「…!……土方さんですか?」

驚いたように聞いてきた沖田さんに、頷いて答えると、沖田さんは溜息をついて。

「辛い経験がありましてね。おなご不信と言うか…」

「辛い経験…。失恋…とかですか?」

いいえ、と沖田さんは首を振った。

「恋などまだしたことありません」

「では…?」

わたしはちょっと驚きながらも先を促すように言っていた。

「……話さなくてはいけませんか?」

気に障ったのか、ちょっと眉間にシワを寄せて言われ、私はハッとした。

「い、いえ…。すみません、立ち入った事を…」

私は気まずいやら、恥ずかしいやらで、詫びを入れると急いで沖田さんに背を向けた。

「では、八郎さんを追いかけます!失礼しました!」

言った私の背に、沖田さんは「ちょっと待ってください」と声をかけてきて。

「用事があって私はここに来たんですよ。今夜の新年会、あなたも来るんですよ」

私は驚いて立ち止まった。そして再び沖田さんの方を見る。

「え…と、どうしてですか?」

「あなたも同門でしょう。天然理心流の」

「あ……」

急に嬉しさが込み上げる。

「同門ではありますが……。わたしなんかがいいんですか?」

「勿論です」

「わかりました!」

「六ツが過ぎたら八木さんの家の広間に来て下さいね」

「はい!」

私は言い置いて道場を後にした。







< 53 / 297 >

この作品をシェア

pagetop