輪廻ノ空-新選組異聞-
「もう大丈夫です!」

お水を飲んで少し落ち着いたら、スッと疲れは抜けた。

「日頃鍛えてますからね!もう復活」

「確かに…誰よりも稽古に励んでいます」

でしょう、と笑顔になってしまう。頑張ってるってのは、自分で言ってるうちはダメで、ひとから認められて、初めて頑張りが成就するんだ。

「でも…良かった」

わたしは、つい漏らしていた。

「何がです?」

「沖田さん、最近わたしの事、避けてるみたいだったから」

休日を少しでも一緒に過ごして下さいって頼んでもダメかなって思ってた。

そう素直に告げたら、沖田さんは苦笑いして。

「ゆっくり…過ごしたいですね」

と、返事にはならない事を言った。でも…否定じゃないから。避けられてたのは本当だと言う事の含み。ゆっくり…話をしたいんだろうな、と。

「はい。お話しておきたい事もありますから」

わたしは頷いて答えた。

「嵐山に行ってみませんか?」

新選組で行動する洛中からは反対に離れた所。きっと誰にも会わないだろう。

色んな予感が駆け巡る。
悪い予感、良い予感…。

でも
残された時間を考えた時、
私の中に渦巻くのは…

沖田さんと離れたくない、
沖田さんが…好き。

そんな一方的な恋愛感情と…

何よりも

感謝の気持ち。


沖田さんが最初に私を拾ってくれて。

ずっと

どんなに

支えられてきたか。

みんなへの感謝の気持ちも本当に大きくて。だから、今回の役目で少しでも恩返しをしたい。

最後の役目になるかも知れないのだから。

そんな沢山の気持ちを、沖田さんには伝えたかった。

ありがとう、と言う言葉と一緒に。

「嵐山、初めてです!」

行きましょう!とわたしは沖田さんの隣に立った。
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