BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
約二時間後。一次会が終わり、八人ぞろぞろと店外へ出た。
 ビルの階段を下りながら、金田が陽気に言った。

「この後、時間があるならもう少しどう?」

 その誘いに、乃々たち三人は顔を見合わせ、笑顔になる。

「えー。どうしよっかあ」
「時間はまだ平気だよね」

 女性の反応が好感触だと思ったのか、谷川が畳みかけるように会話に加わる。

「じゃあ、カラオケでも行っちゃう?」
「いいね。谷川、すぐ予約できるか?」

 乃々らは肩を寄せ合い、なにやら楽し気に小声で話をしている。どうやら、どの男性がタイプかなどの情報を交換し合っているようだ。

 三人がヒソヒソ話で盛り上がっている後方で、夕貴が月穂に声をかける。

「大和さんは?」

 月穂は振り返るなり目を瞬かせ、微笑を浮かべる。

「あ、ごめんなさい。私はこれで」

 元々穴埋めだけに呼ばれた飲み会。さらに合コンは慣れないため、正直今しがた終わった一次会でもへとへとだ。二次会だなんてありえない。

「帰っちゃうの? 三十分だけとかは?」
「すみません。まだ仕事が残っていて」

 月穂は自分の髪の毛先を握り、視線を落とした。
 気遣ってくれる夕貴に対し、心から申し訳ないと思いつつ、月穂ははっきりと断る。

「大和さん、明日もお仕事ですもんねー。残念です~」

 いつからかふたりの会話を聞いていたらしい乃々が割って入る。

「またぜひ、一緒に食事しましょうね。帰り道気をつけて」

 まったく引き留めることもしない乃々は、月穂を気にすることもせず、ビルから出てきょろきょろとする。

「あれっ。隼さんは?」

 その言葉に、月穂も思わず辺りを見回す。
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