BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
なんとなく、ああなってしまっただけで、特別な感情があったうえで……ということではないのではないかと思い始める。

 もし好意があってしたことなら、キスのあとに甘い雰囲気にでもなりそうだ。
 でも、なにもなかった。本当にただ世間話をして別れたのだから。

 月穂がぐるぐると思考を巡らせている間に、夕貴は近くのベンチに腰を下ろしていた。目が合うと、夕貴に手招きされる。

「祥真から連絡来るまで、付き合ってくれる?」
「ええ。私でよければ」

 そう言って、夕貴との間にひとりぶんの距離を取り、腰を下ろした。

「いや~。なんだか不思議だね。初めて大和さんと会ったときは、もう会うことないんだろうなって思ってたのに」
「あのときは、帰り際にわざわざ私のところまできていただいて、すみませんでした」

 夕貴が言うように、人と人との出会いは不思議なものだとつくづく思う。

 駆り出された合コンで出会った相手の会社に、今は通っているということも、ここで夕貴と話をしていることも。

 なによりも、遠い異国の地で出会った祥真とあの日再会できたことが。

「そんなこと全然気にしなくていいのに。それに結局、送らなかったし」
「完全に場違いだったので、色々迷惑かけたんじゃないかって」

 ロサンゼルスも合コンも、たった一度訪れただけ。
 それそれの〝たった一度〟で出会うなんて、不思議を通り越して奇跡だ。
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