BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「まあでも、特定の彼女を作らないってだけかもしれないか。祥真みたいなカッコイイ男を、女の子が放っておくわけないだろうし。悔しいけど」

 月穂の心境など知らぬ夕貴は、ペラペラと話をし続けた。普段からよく話すタイプだとはわかっていたが、今はさらに多弁だ。

 そのことに気付いたのは、ほかでもない本人で、夕貴は項垂れて頭を軽く掻いた。

「あー。祥真の話するために会いにきたわけじゃないんだけどな」
「確かに放っておかないですよね。隼さんって、容姿だけじゃなく優しいですし……」

 しかし、月穂は夕貴の変化もスルーして、遠く一点を見つめ、ぽつりと言った。

 思い起こせば、つい先日は駅のホームで外国人に絡まれているところを助けてくれたし、昨日だって雨に濡れたからと部屋に上げてくれて、自宅にまで送り届けてくれた。

 そもそも、出会ったときからだ。
 祥真が助けてくれたのは――。

 夕貴は心がどこかへ行ったようにボーッとする月穂を見て、どこか引っかかりを覚える。

「……祥真となにかあった?」

 これまでの和気藹々とした雰囲気から一転、真剣な眼差しで問われ、一瞬答えるのを躊躇った。

 敢えて自ら話をすることではないが、隠す必要もない。
 月穂は数秒考え、口を開く。
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