誠の華−ユウガオ−

別れ





日も登りきっていない明朝、船の甲板で物思いに更けていた。


6日の深夜、将軍徳川慶喜と松平容保は大坂城を抜け出し江戸へ逃亡。


大将の逃亡にすっかり戦意喪失した私達旧幕府軍は新政府軍に敗北した。


9日には永倉・原田を筆頭に動ける隊士達が乗った順動丸が出港。



翌日は近藤土方率いる負傷兵を乗せた富士山丸が出港した。



病人である総司と怪我をした私も富士山丸に乗っている。



船に揺られること3日。


昨晩から高熱に魘される山崎の顔が頭から離れたかった。


あの傷を山崎は五臓六腑が外れているから大したことないと言っていたが船に乗る直前に無理矢理医者に診せると既に致命傷となっていた。


にも関わらずあそこまで動き回っていた山崎に医者は関心すら抱いていた。



山崎が私のせいで死ぬかもしれない。



こんな怪我さえしていなければ…、助けられたのに。


堪えきれず手摺にポタポタと涙が零れ落ちる。


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