誠の華−ユウガオ−



10歳の時、私は自殺した。


あの時に死ぬはずだった。


死んでいれば良かった。


そうすればこんなに辛い思いをせずに済んだだろう。


縁側に座ってひたすら空を見つめていると肩に羽織が掛けられた。


振り返るとそこには総司がいた。


「そんな事、言わないでよ」


辛そうに目を細めて言った総司に腹が立つ。


「だってそうでしょう。あの時に私が死んでいればこんなに辛い思いをしなくて済んだ」



悔しくて手を思いっきり握りしめると総司の温かい手が重なった。


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