誠の華−ユウガオ−



「そうだね、確かに今すごく辛いよね。でもさ、死んだ平助や山南さんにとっては今を生きていられる雪が羨ましいと思うんだよね。少なくとも先の短い僕にとっては雪が羨ましいよ」


「だったらあげたい!死んじゃった平助でも山南さんでも総司にでも、必要な人にあけだい!私なんて生きていたって誰のためにもなってない!!不思議な力を持ってても剣の腕を上げても誰も救えてない!!!」


そう言って泣きじゃくる私を総司は抱きしめてくれた。


「雪は側にいてくれるだけで僕をいつも幸せにしてくれているよ。雪の存在が僕を救ってくれてる。僕だけじゃない。近藤さんや土方さん、左之さん、新八さん、一君、源さん、数馬や裕次郎だってみんな雪の存在に救われてる。僕らの元気の源がいなくなったら新撰組は潰れちゃうよ」


冗談めかして言う総司の言葉に少しだけ心が軽くなった気がした。


「ずるいんだから…そんなこと言って……」


「ははっ、酷い顔」


目元を真っ赤に腫らして鼻水を垂らした私の顔を見て笑っているが怒る気にもならなかった。


「ありがとう、総司」


「うん」


再び総司の胸に顔を埋めると頭を撫でてくれた。


霜月の、虚しいほどに晴れ渡る空だった。


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