サトラレル
「ねえ、須藤さん」
頭メロンを憂いていた私の思考を引き戻すように、看護師さんに声を掛けられる。
彼女が首から下げているネームプレートには、『主任 小笠原 律子』と書かれていた。
「間違ってたらごめんなさいね。……あなた、今声が思う通りに出せなかったりする?」
小笠原さんが遠慮がちに問いかけてきた。
確かに、声は出せない。
だけど、小笠原さんが考えているような理由では無い。
たぶん彼女が考えているはずの、事故のショックとか、ここに来るまでの精神的なショックなんかじゃなくて……
『猫に言葉を食べられてしまうので話せません』
…………なんて、とんでもない理由で、今私は一言も言葉を発する事ができないのだ。
だからと言って、それを小笠原さんに伝えたとして、納得してもらえるはずも無い。
そもそも彼女には、私の足元でふてぶてしく寝転んでいるこの白猫が見えていないんだから。
きっと、頭がおかしくなってしまったって思われる。
……それとも、私の頭は本当におかしくなってしまったのかもしれない。
この妙な状況を伝えたり、理解してもらう事も面倒になってしまった私は、結局彼女の問いかけにコクンと頷くしか無かったのだ。
頭メロンを憂いていた私の思考を引き戻すように、看護師さんに声を掛けられる。
彼女が首から下げているネームプレートには、『主任 小笠原 律子』と書かれていた。
「間違ってたらごめんなさいね。……あなた、今声が思う通りに出せなかったりする?」
小笠原さんが遠慮がちに問いかけてきた。
確かに、声は出せない。
だけど、小笠原さんが考えているような理由では無い。
たぶん彼女が考えているはずの、事故のショックとか、ここに来るまでの精神的なショックなんかじゃなくて……
『猫に言葉を食べられてしまうので話せません』
…………なんて、とんでもない理由で、今私は一言も言葉を発する事ができないのだ。
だからと言って、それを小笠原さんに伝えたとして、納得してもらえるはずも無い。
そもそも彼女には、私の足元でふてぶてしく寝転んでいるこの白猫が見えていないんだから。
きっと、頭がおかしくなってしまったって思われる。
……それとも、私の頭は本当におかしくなってしまったのかもしれない。
この妙な状況を伝えたり、理解してもらう事も面倒になってしまった私は、結局彼女の問いかけにコクンと頷くしか無かったのだ。