サトラレル
「鳴海先生」
声を掛けて止める術が無い今の私の代わりに真ちゃんに声を掛けてくれたのは、小笠原さんだった。
「先ほど須藤さんには担当の佐藤先生が説明しましたけど、頭部や全身に外傷や打撲はありましたが、こちらに運ばれて来た時に撮ったCTには異常は認められませんでした」
「……器質的なショックが原因じゃない失語って訳か。いや、この場合は失声かな」
オイオイと泣いていても、そこは流石に医師と言うべきか……ちゃんと人の話を聞く姿勢は失っていなかったらしい。
「あと、意識はありませんでしたが、命に関わる状態では無かったと言うのは救助者が救急隊員に伝えていたそうですから」
『救助者』と聞いて、私の顔は分かりやすく不機嫌に歪み、真ちゃんの顔はピッと引き締まった。
「野々花を助けていただいてありがとうございます。……ほら、野々」
頭を下げた真ちゃんに促されて、私も小笠原さんに向かってペコンと頭を下げた。
怪我人だから言われないだけで、その顔には"なんでそんな不満な顔をしてるんだよ"と、はっきり書いてある。
「いえいえ。私が助けた訳じゃないですからね。本人にもお礼とか、そんなの気にしなくて大丈夫ですからね。私からも伝えておきますから」
「いえ、落ち着いたら必ずお礼を。樹に宜しく伝えて下さい」