今宵は遣らずの雨

◇第九話◇


一晩中、引きも切らず目合(まぐわ)ったあと、

明け方、木戸が開く頃、民部は帰る支度を始めた。

「……民部さま、どうぞお達者で」

小夜里は女房のように着付けを手伝いながら、民部の背後からそっと告げた。


あの夜から七年以上も経って、やっと訪れたお人である。

次はいつになるか……もしかしたら、これが今生(こんじょう)の別れになるやもしれぬ。

小夜里は込み上げてくるものを抑えた。

< 121 / 297 >

この作品をシェア

pagetop