今宵は遣らずの雨

大名家の血をひく正室は、(かん)がきつく、思い通りにならぬときは癇癪を起こして、それが高じると引きつけを起こすと聞いている。

妻妾同居となれば、どんなふうになるか気が知れなかった。

今の暮らしでは、兵部少輔がいつ訪れてくれるかわからず、時折どうしようもない不安に襲われることもあるが、それでも初音は「仕合わせ」だった。

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