女の賞味期限
このままでは、お礼をしたくてもお礼ができなくなる。

「僕は、長岡大成と言います。」

「私は、柏崎遥香です。」

私と長岡さんは、一緒に宜しくと頭を下げた。


「長岡さん、明日います?」

「明日は休みですけど、ここに住んでいるので、いつでもいますよ。」

あっ、そうですよね。

と言いそうになって、口を塞いだ。


昨晩、出会ったばかりの人に、そんな事言うのは、間違いの元だ。

「あっ、じゃあご馳走様でした。」

私は食べ終わった袋からもう一つのおにぎりを出し、ゴミをポリ袋に入れた。

「いえ。」

私は立ち上がると、急いで部屋のドアへ直行した。

無論、すっぴんだからだ。

用事が済んだら、1秒たりともここにはいたくない。

「あっ!そうだ。」

「えっ?」

ドアを閉める時に、長岡さんに声を掛けられたけれど、ドアは完全に閉まってしまった。

でも、もう一度開けようと言う気持ちにも、ならなかった。

すっぴんのせいで。




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