無音の音
電車は混んでいた。

友達と遊びに行く人や、カップルで仲良くしゃべる人、仕事に行く人で溢れていた。

私は出入り口そばのポールに捕まって、段々人で溢れる車内に背を向けていた。

ドアのガラスに自分の姿が写る。

ピンクと黄色と白いボーダーの長袖ポロシャツの上に、デニムのサロペットを着ている。濃い紫のカラータイツにムートンのブーツをはいて、私が持っている中で一番高い、3980円の鞄を持っている私が写る。

ここ半年ほど全く服を買ってなかったので、昨日慌ててサロペットだけを買った。

私の今の全財産では、2980円のサロペットを買うだけで精一杯だった。

本当は、上から下まで揃えたかったが仕方がない。

今日遊ぶお金がなくなるよりはましだった。

さりげなく角度を変えてガラスに写る自分の姿をチェックしているうちに、目的の駅に着いた。

ざわめきが聞こえないほど、緊張している私がいた。
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