刺す
信号が、赤から青に変わった。
一斉に人混みが動き出す。
男と女も動く。
私も動く。
と同時に、男の脇腹にナイフを素早く刺した。
「イテッ」
と、短い声がした。
私はその声を背中で聞きながら、ナイフをバックにしまい。
ざわめく人混みの中から脱出した。

異常な程高揚している自分を感じた。
刺した。
私は人を刺した。
生き死になどどうでも良い。
刺した事に意義がある。
何気なく右手を見たら、血が付いていた。
その血すら、今の私には誇らしい。
あー…
甘い物が食べたい。
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