花に美少年

結児君の言葉がどこまで本気かはわからないし、たぶん半分以上が冗談だろうけれど、万が一本気だったら・・・期待をさせるようなことはしたくない。
そういう中途半端な優しさがどれだけ厄介かを、私もよく知っている。少し日が経ってから、ポストに御礼を入れておこう。

本当に助けられた。泊めてもらえたってことだけではなくて、気持ちの部分でも助けられたと思う。
この数日、一人で居たらもっと弱っていたと思う。毎日酷い顔で仕事に行くことになっていたと思う。
でもそうならなかったのは、結児君の存在があったからに違いない。それだけは言い切れる。

不思議な時間だった。
でも、悪い時間ではなかった。

「ありがとう」

静かな玄関で、不在の家主に感謝を伝えて、私は一人で扉を開けて外に出た。
今度こそ本当にお別れだ。
預かった鍵を玄関のポストに入れたとき、少しの寂しさに襲われた。





「芽衣子!」

湊結児の部屋を出て一時間後、よく晴れた空の下、私は呼ばれた名前に振り返る。
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