消える世界で、僕は何度でも君に会いにいく。



* *



開け放たれた窓から生ぬるい風と共に運ばれてくる、蝉の声。


全国的に涼しかった去年よりも、梅雨が遅れて雨続きだった一昨年よりも、断然夏だと思える今日この頃。



人のいない蒸れた教室で、智と聖司と居残っていた。


何をしているかと言うと、実は僕もよく分かっていない。


まあ、それはいつものことなんだけども。



とりあえず、智が持ち込んだシャボン玉をひたすら無言で飛ばしていた。


そう、この二人がいて無言。


なんだか気味が悪いな、と思い始めた頃。



「この際だから言うけどよ、最近お前元気なくね」


窓から外を眺めていた智が、聖司が飛ばしたシャボン玉をつついて割りながら僕をちらりと横目に見る。


「……そんなこと、ないけど」


言葉を溜めた後、ふいっと顔を逸らして返答する。


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