初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
中学2年 県大会本選
はじめての県大会予選は無事通過した。
それから二週間後の今日が本選。
予選で勝ち残ってきた学校ばかりだから前回に比べ当然レベルは高い。
順番を待つ間に外で軽くチューニングも含めた練習が行われる。

遠くで出だしの練習を何度もしている、聞こえてくる音は安定感がありさらに迫力ある演奏。
ついついそちらに気を取られていると、

「はいはい、みんなこっちに集中~」

顧問の先生がパンパンと手を叩きながら自分の方に集中を促す。

「大丈夫。今までしてきた事を今日は精いっぱい出し切ればいい」

先生のその言葉に頷く。
練習は一杯してきた。今日はその最後の仕上げなんだから。



そして私たちの順番が回ってきて演奏が始まる。
最初に課題曲。そして自由曲。

県民ホールに響き渡る音。

ステージの上で緊張してだんだんと手がしっとりしてくる。
演奏も中盤に入り、指揮をする先生の顔がふっと笑顔になった。

『最後は楽しく歌うように』

この曲のクライマックスに向けて、いつも先生が言っていた言葉。
それを思い出し、ふっと肩の力が抜けた
瞬間から周りの音がよく聞こえるようになって、それに同調できるようになった。
それからは最後までみんなと一緒に音を奏でていった。
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