初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
すべての演奏が終わり、審査時間を経て結果発表。

昨年は銀賞だった。
今年は関東大会も狙えるって言われているプレッシャーもあって金賞以外は目標においていない。
みんなそのつもりで練習も重ねてきた。


結果は金賞。
目標にしていた金賞をついに受賞した。
けれど、関東大会への切符は私たちの学校には与えられなかった。


学校まで戻るバスの中。
往きとは大違いの静かな車内。

3年生はこれで部活から引退。

9月からは受験に集中できるけど、やっぱり今までしてきた事がぷっつりと途絶える事の寂しさは相当なものだろう。
学校に着き、楽器をすべて運び終え、音楽室に集合すると先生が私たちを待っていた。

「はい、みんなお疲れ様。まずは金賞おめでとう。」

おめでとうと言う言葉が今は嬉しく感じない。

「僕は、今までの中で一番の出来だったと思ってる。それにこの学校にとって金賞は初めてなんだし、自信を持っていいと思う」

いつもは頼りない先生が、今だけは少しだけかっこよく見えた。

「だから残念という言葉は言いません。お疲れ様。金賞をありがとう」

最後は先生の目がちょっとうるんでた。
だからうっかり私たちも泣きそうになってると、

「みんな、おつかれー」

大きな声で最初にそう言ったのは外山先輩だった。
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