初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
誰かと食事なんて楽しむ気分じゃないなんて思ってたのに、気づけば相良さんの話に笑って一緒にワインを飲んでこの時間を楽しんでた。

「今日ここでクルミちゃんに会えてよかったよ」

屈託のない笑顔でサラッといったセリフはうっかり誤解しそうなもので。

「食事は一人よりも二人の方がいいですもんね」

だからこそ、そんな誤解はしてませんとしっかり意思表示。

「まぁ、それもある」

それも?

「あ、そうだ。愛羅ちゃんが八月じゃなくてもいいのでまたご飯一緒に食べましょうって」

「あぁ、そうだね」

あれ?あんまり乗り気じゃない?
今日も仕事帰りですって雰囲気だったし、きっと忙しいんだろう。

「あ、でも忙しいなら無理しなくても」

「はは、そんな気使わなくても大丈夫だよ」

「そんな、」

「同じ年なんだし、気楽にさ」

相良さんのその言葉にハッとする。
私は人付き合いに構え過ぎてる感じが見え見えなんだろうか。彼と会ったのはまだ二回目なのにこんな風に言われてしまうなんて。

「あぁごめん、ほら俺こんなだから気づかいとかこれっぽっちもいらない」

これっぽっちって指で作って見せてる彼のそんな仕草がおかしくて。

「ふふふ、なんかそれ。変かも」

「だろ?だからさ、とりあえず飲も」

ちょっと飲み過ぎ?って思ったけど、やっぱり楽しい席だとお酒が進む。
それに相良さんと飲んでると、さっきのモヤモヤがどこかに追いやられて。

たとえそれが一時の事だとしても、今はそれを楽しみたい。
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