キミのことは好きじゃない。



◇◇◇◇◇◇◇帰り道◇◇◇◇◇◇◇◇






「ねぇ、そう言えば颯斗が話してた特別なコって、どういう意味だったの?」


高校から自宅まで送ってくれるという颯斗と、あの頃は一緒に歩けなかった通学路を手を繋いで歩いている。


それがなんだか妙にくすぐったい。


「俺、昔っから結婚は早くしたかったんだよ。子供好きだしな。こういう仕事だと、研究、また研究でさ、気付けば40になってましたとかザラにいるし。だから、本気で百合のこと口説いていこうって覚悟決めたんだ。ちょうど百合に彼氏いないの分かってたし、落とすなら今かなって」


「そ、なんだ……」


「でも、まさかその後百合から可愛い告白聞かされるなんて思ってもなかったから、決意表明のタイミングは合ってたんだよなってホッとしたよ」


「……もしかして、私颯斗の策略にまんまと乗せられたってこと、なの?」


「まさか、って言ったろ?でも俺だって可能性ゼロで頑張るの結構しんどいんだぜ?その辺は理解してもらえると助かる……ってことでさ」


実家が見えてきたところで颯斗は足を止めて私と向き直った。


「……?」


「俺ら、実際には付き合い始めたばかりだけどさ。これからも離れるつもりはないんで、このへんで手を打たない?」


「……結婚するってこと?」


「そう。俺はもう百合以外考えられないから、百合も、これから先現れるかもしれない俺以外のハイスペックな男のことは諦めて、俺の奥さんになってくれよ」


「颯斗、プロポーズまで遠慮気味なのね」


おかしくなって笑ってしまった。


変なの、颯斗にはもう全部分かっていると思ってたのに。私が今まで出会ってきたどの男性よりも颯斗が1番だって。


私にはずっと、颯斗だけしか見えてないのにね……。


「颯斗、今からうちに来てよ。両親に紹介するから。『彼が私が一生大切にしたい男です』って」


「こんな時間にか?印象悪くないか?……いや、こういうのは勢いか……」


ブツブツ隣で挨拶を考え始めた颯斗の手を引いて、私は幸せな気持ちで実家までの道のりを歩いた。


未来の旦那様と一緒に。


















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