キミのことは好きじゃない。


「そんなこと!」


「分かってるよ、だから言ったろ?疑ったのは一瞬だ。百合は多分心の中に隠していた気持ちを吐露しただけだって。あんな風に可愛く泣かれて『ごめんね』なんて言われたら、俺の理性なんて簡単に崩壊するっての」


「…………」


颯斗の手が私の顎にかかる。
上向かされて、そっと口付けられた。


「……初めてだったのに、ごめんな?」


「……え、」


なんで初めてだって分かってしまったんだろう?と恥ずかしさで顔を膝に埋めた直後、颯斗が首筋に唇を落とした。


肩がピクンと跳ねる。


「優しくしたかったけど、余裕なくてさ……痛みに堪えてる百合を見てやっと気付いた」


「も、やだ……言わないでよ」


恥ずかしさで消えてしまいたくなる。


「俺、ずっと後悔してた。酔ってる百合を無理矢理自分のものにしたこと。優しくしてやれなかったこと。本当はもっと優しくしてやるつもりだったけど百合寝ちゃってさ……だから、目を覚ましたら俺からちゃんと告白して、素面の状態で百合のことめちゃめちゃ甘やかすつもりだったんだけど……」


「私が逃げて、避け続けたんだよね」


「そ。で、さっきのあのセリフだ。凹むし、腹は立つし……だけど、俺はあのまま終わるつもりなんてなかった。俺たちの関係が捻れてしまったのが高校の時だっていうなら、あの頃いたこの場所からやり直したくて……ここでちゃんと伝えたいって思った。最後の最後で百合が本心を言ってくれて嬉しかった」


酒の席だけじゃさ、ちょっとやっぱり自信なくてさ……と笑う声に颯斗を見上げれば、優しいキスが降ってきた。


それを受け止めて、そっと目を閉じた。






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