眠り姫は夜を彷徨う
それでも、分かったことも少なからずある。

奴は自分からは絶対に手出しはしていない、ということだ。

明らかにチンピラ達を病院送りにする目的で夜の街をうろついている風なのに、自分から吹っ掛けていくようなことはしない。

だからと言って、一見ふらふらと当てもなく歩いているように見えるが実はそうでもないようで。

(明らかに煽ってるフシはあるんだよな…)

(はた)から見てると、わざと裏通りの悪さしている奴らが溜まっていそうな場所にばかり現れ、運よく(?)絡まれればそいつらを一掃する…そんな感じだ。

それが何とも意地が悪いというか、イイ性格してるよなって思うけど。

(ま、それでもそのまま伸されちまう奴らが情けないってだけなんだけどな…)

特に最近は掃除屋の噂が広まったことで、奴を倒して自分らの名を上げようとする低俗な(やから)が増えた。余計にカモが集まって来ている状態なのだ。

この街の状態を収めたい自分としては、方向性が逆のような気もしないでもないのだが、だからと言って掃除屋がいなくなれば平穏が戻るのかというと、そうではない。

(…なんだかなぁ)

桐生は再び溜息をついた。


夜の街で。

いつだって騒ぎを耳にして駆け付けると、あいつは無駄のない動きで雑魚(ザコ)ども全員を地に倒し、何事もなかったかのように風に吹かれて、その場に立ち尽くしている。

その姿は孤高で。そして何より美しかった。

本来なら喧嘩の生々しさや何かが感じられても良いはずなのに、何故かそれがない。

(オレが、おかしいんだろうか…)
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