眠り姫は夜を彷徨う
「そうですね」と相槌を打ちながら男の半歩斜め後ろをキープしながら歩いていたその男子生徒は、周囲に視線を配りながらも再び口を開いた。

「でも…その掃除屋って、いったい何者なんでしょうね?巷ではどこのグループにも属してない一匹狼だって噂になってますけど。でも、もしそれが本当だとしたら相当な手練れですよ。昨日やられた『FLAME(フレイム)』のメンバーは十数人現場にいたらしいじゃないですか。それを一人で()しちゃうっていうのは流石に簡単に出来ることではないですよ」

声のボリュームは相変わらず控えめだったが、何処か興奮気味に話すその生徒に、前を歩いていた男は振り返りもせず鼻で笑った。

「それはまた絵に描いたような、すげぇ武勇伝だなァ」

顎に手を当てると唸るように呟く。

「桐生センパイ。…実は結構、楽しんでたりします?」

その桐生(きりゅう)と呼ばれた男は、その後輩のツッコミに破顔した。

「はははっ…まあな。何にしても面白くなってきたじゃねぇか。その掃除屋とやらが単なるヒーローごっこに興じているだけのおめでたい奴なのか、新たな勢力に変わる危険人物となるのか、まだ判断し兼ねるけどな」

「そうですね。とりあえず、早めに目撃者にアクセスしてみますね」

「ああ。立花、頼むな」

その立花(たちばな)と呼ばれた生徒は、小さく頷くと「また放課後に」と声を掛けて一礼すると桐生を追い抜いて小走りに駆けて行った。

その後輩の後ろ姿を見送りながら桐生はひとり小さく呟いた。


「早く、その(ツラ)拝んでみたいぜ」

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