一つだけ願いが叶うなら
第1章

Don't forget

ありえない。
ありえないありえないありえない。
なんで私はいっつも大事な日に寝坊するの!?!?
今日は彼氏の歩と水族館デートの日なのに!
駅前に9時集合なんだけど、家から駅まで15分かかる上に今8時半という絶対絶命の状況・・・
しょうがない。朝ごはんは諦めてどこかのコンビニで買おう。
急いで身支度して玄関で靴を履いていると、ポストに郵便物が入っているのを見つけた。
「あれ?いつも入ってないのになぁ・・・」
今すぐにでも出なきゃいけないけど好奇心に負けて郵便物を見ることにした。
『木下遥様
◯◯県◯◯市◯◯町 水嶋由紀』
ぞっとした。宛名は嫌ほど聞いた苗字。急いで裏面を見る。
つらつらと前置きの文章が述べられたあと、本題が出てきた。
『来月14日で息子の和樹が息を引き取ってから2年経ちます・・・』
法事の日にちと共にそう書いてあった。
「2年・・・」
彼のお葬式にも、去年の法事も行ってない。今年も行かないでおこうかな。
でも、今年は行かなきゃいけない気がする。どうしてだろう。今まで即決で行かないって決めてたのに。
もう、彼のことは忘れないといけないのに
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