七色セツナ。1




「こんな重いの持って、帰れねーだろ?

時間は
あるからいいんだよ。

・・・それよりほら、
こっち側のドアが
開くから避けとけ」


ドアと座席の
わずかな空間に誘導され
他の乗客から遮断されるように
朱羽の左手が、花凛の頭上の壁に置かれた。


身長165cmの花凛の目の前には、
185cmの朱羽。


その身長差によって
鎖骨の下まで開いた
シャツが目の前にある。


頭上に寄せられた
腕のシャツも捲られて、逞しい。


「ね、ねえ、朱羽。

あの...目の前に鎖骨が……」


「なに?

出てんの?

俺から……

フェロモンってやつ」


フッと微笑んだ朱羽を見て、
座席のOLが真っ赤になった。


S駅に着き、
花凛を守るように
朱羽も降りた。


「だったら、乗越分は
私が払うよ」


改札に向かい、
財布を取り出そうとした、
その時ー



< 269 / 318 >

この作品をシェア

pagetop