Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

 その無邪気な問い返しに、ミュアは腹がたった。


 なぜなのか、分からないはずはないだろうに。

 鉱山のことが一番だけど、人前で強引にキスすることだとか、
 間に一本見えない線をひいているような態度とか、
 なんで、毎夜、長椅子で寝ているか、とか!!!!

 勢いにまかせて喋れば、なんだか取りかえしのつかないことまで
 口走りそうで、ミュアはいったん、すう〜と息をすって、
 心を落ち着かせた。


   
    「陛下、ボドナ鉱山はターラントとの両所有です。
     この問題は簡単に、前向きに検討する、と言えるもの
     ではありません」



 それからみっちり三十分ほど、ミュアはボドナ鉱山について
 喋りつづけた。

 
 とうとう継ぎたす言葉がなくなって、ミュアは、はぁ、はぁと
 肩で息をし、グレイを見上げている。
 グレイは最初から最後まで、まったく動かず、表情も変えず、
 一言も口をはさまず、ミュアを見下ろしている。


   
    「陛下……」



 弱々しくもミュアがまた口を開きかけたとき、
 グレイは、はじめて動き、ミュアを横抱きに抱き上げた。


   
    「何をするんですか!」
    「話は終わったんだろ?」



 そう言って軽々とミュアを広いベッドの上に運び、おろすと、
 グレイはミュアから離れようとした。



 まるで、子供をなだめるようなあしらい方にカッとなり、
 ミュアは思わず、グレイの夜着の襟元をつかんで引きよせていた。


 驚いたようなアンバーの瞳が目の前にあり、
 鼻と鼻がくっつくほどの距離に、口からとびだしかけていた
 怒りの言葉はひっこんでしまい、 胸がとくんと鳴る。



 それはわずかな時間だったのだろうが、ミュアにはとても長く感じられた。

 その時間をもとに戻したのは、グレイの言葉だ。


   
    「好きな相手はいなかったのか」









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