Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

 なんども手を組みかえながら、ミュアはいつもグレイが寝るときに使う
 長椅子の上に正座して座り、ひるみそうになる心に、なんども活を
 いれている。


   「うやむやにしてはおけないわ、ターラントに関係することだもの」


 でも、昼間の出来事を思いだすと、気持ちがくじけていく。

 また、貴族たちが居並ぶ前で、口づけをされた。
 これで、二度目だ。

 恥ずかしさと、いたたまれなさと、怒りと……。

 いろいろな気持ちが湧きあがり、ごちゃまぜになって、ミュアの心の中で
 渦を巻く。


 様々なことが問題だが、なにより問題なのは ー ー
 

 突然のグレイの口づけが、心の底から嫌ではないことだ。
 本当に嫌だったら、今の十倍は突きはなす力が出ているはずだから。
  
  どうしてなんだろう……

 近づいてくるグレイの顔に、ミュアの口許に視線をおとすアンバーの瞳に、
 なぜか一瞬で魅了される。

 押しつけられる唇の熱さに、自分の全てが奪(も)っていかれそうになる。

 
 ぴっしゃん!とミュアは両頬を叩いた。


   
    「ダメよ、なにより問題なのはそこじゃなくて、ボドナ鉱山
     なんだから」



 キィと軽い音でドアが開き、グレイがはいってきた。

 長椅子の上のミュアに、グレイは驚いたように一瞬立ち止まったが、 
 何くわぬ顔ですたすたと近寄ってくると、


   
    「そこをどいて欲しい」



 と言った。


    「嫌です」
    「なぜ?」




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