Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

 ミュアの手をとりまずグレイが席につく。
 そのとなりにミュアがすわると、貴族たちもそれぞれの席についた。


 そしてラッパの音も高らかに、帰国した第二連隊がテーブル席の
 むこうにならび、式典がはじまる。



 様々なスピーチ、功績をたたえる記念品の贈呈、
 何度もかかげられる乾杯のグラス。
 
 兵士のささえる旗が、風にパタパタとはためく。

 式の終わりに、故郷を想うときに歌ったと、アルメリオンの古い民謡が
 兵士たちの口にのぼると、テーブルについていた貴族たちも、
 その場の者が皆立ちあがり声をそろえた。

 国王も王妃も立ちあがる。

 ミュアは歌えなかったが、素朴な旋律の家族や国を懐かしむ歌に
 耳をかたむけた。


 歌がおわり、皆が拍手をし、誰かが陽気な声で、乾杯!と叫ぶ。

 強い風が、さぁーと、天幕の中を駆けぬけていった。

 グラスをかかげようとしたミュアは、強い風に少しよろめいた。
 杯の中身を溢すまいとつっぱった腕をグレイが掴み、ミュアの身体は 
 とん、とグレイにあたる。


   
    「風がつよいな」
    「はい」


 笑顔で答え離れようとしたのに、離れられない。

 風で巻きあがった髪が、グレイの服のボタンに絡まっていた。
 あわててグラスを持っていないほうの手で引っぱるがとれなくて、
 気づいたグレイがミュアの手ごとおさえて囁く。


   
    「無理に引っぱるな、髪が傷む」



 でもあまりにも距離が近く、まるでグレイにひきよせられて、胸に顔を
 ふせているようで、じわじわと恥ずかしさがこみあげてくる。

 
 グレイが解こうとしてくれるが、絡まった髪はなかなか解けず、
 やっと侍従のひとりがはさみをもってきて、ミュアはグレイから
 離れることができた。


   
    「すみません、陛下」
    「いや、たいしたことじゃない」




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