大切なものを選ぶこと




「美紅さん胸デカっ!!」





「ちょっ、葵ちゃん!」





大きな声で何を言ってるんだ君は。



更衣室にいる女性たちの目が一斉に向いたので慌てて前を隠す。



余計なことを言っておいて我関せずでケタケタ笑ってないでよホント!




葵ちゃんはワンピースタイプの白を基調とした花柄の水着で、楓さんのセクシーな感じとは違った意味でよく似合っている。





「可愛い子って何着ても可愛いんだね…」





「何言ってんの!?美紅さんの方が可愛いしスタイル抜群じゃん!その水着もよく似合ってるし」





「ホント…?変じゃないかな?」





「全然変じゃないよ。弘兄も喜ぶよ!…いや…妬くかな…?」





葵ちゃんは笑いながらそう言ってくれるけど、不安しかない。



ビキニなんか着たの初めてだし、紺や黒などの地味な色が良かったのに三人に勧められるがまま水色の明るいやつにしてしまった。



こんな明るくて華やかな色、自分じゃ絶対に選ばないのに…





「ほらー美紅さん行くよ!似合ってるから大丈夫だって!」




葵ちゃんに背中を押されて渋々更衣室を出る。



ちなみに日焼け止めは葵ちゃんに塗ってもらった。弘翔に頼んだらなんかヤバそうだしね…あの人意外と…あれだから。




あぁ…葵ちゃんのせいで至るところから男性の視線が飛んでくる。



一緒に歩くのツライ…。秋庭家の遺伝子を少し分けてもらいたかった…。



皆さん、この超絶可愛い子は絶賛片思い中なのでそんな邪な視線で見ても意味ないですよ。






「お、美女発見。人が群がってるから誰かと思ったよ」





「美紅ちゃんも葵ちゃんも似合うね~」





秋庭組の場所に戻る途中、ナンパ相手を探し中の夏樹さんと高巳に遭遇。



葵ちゃんとこの男前二人のせいでこの一角だけギャラリーが凄いような…。



逆ナンしようと目をギラギラさせている女性陣に思いっきり睨まれている気がする…。巻き込まないでほしい切実に。






「高巳さん!似合いますか!?高巳さんに褒めてほしくて気合入れて選んだんです!」





「あー…似合う似合う」





「ぜんっぜん気持ちが込もってない!本当に思ってます!?」





「思ってる思ってる。似合ってるよ、葵ちゃんも美紅ちゃんも」





高巳と葵ちゃんの間に前のような殺伐とした空気はない。



付き合ったわけでも、高巳が葵ちゃんの気持ちを受入れたわけでもないけど…何となく安心した。




更衣室で言っていたけど、葵ちゃんはまだ全く高巳のことを諦めていないらしく、何度フラれても気にしていないんだとか。



むしろ、お祭りの時は初めてちゃんと告白を聞いてもらえて嬉しかったと笑っていた。



盗み聞きしていたとは言えるはずもなく、申し訳ない気持ちになりながらも応援していると伝えた。






「美紅ちゃんホントに可愛いよ。弘やめて俺にしない?」





「夏樹さんはさっきから美紅さんばっか!私は??」





「いや~、葵ちゃんのこと褒めると高巳に刺されそうだからさ~。もちろん似合ってるよ」






「意味わかんないっすよ夏さん」





不機嫌な声を漏らした高巳に意味深にウインクした後に、私にだけ夏樹さんが人の悪い笑みを向けてきたのでわかってしまった。




どうやら高巳の気持ちは夏樹さんにも筒抜けらしい…




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