料理男子の恋レシピ
加奈子side

「なんでもします。お願いします。」

そう言ったけれど、高崎さんは最後までyesとは言ってくれなかった。
まぁ、そうだよね。知らない女にいきなり料理教えてくれなんて言われたら警戒するに決まってる。


合コンも終わり。カップルとしてはともかく、仲良くなったメンバーで2次会組と帰宅組に分かれる。

「西原、送っていくよ。」
高崎さんに声をかけられた。
「どうせ同じところだしな。」

最寄り駅で降りて、2人並んで家までの道のりを歩く。
正直、気まずい。
「なぁ。」
「なんですか?」
「お前、掃除とか洗濯はできるの?」
「人並みには。」
というか、どちらかというと得意。
「料理。そんな苦手なの?」
「フラれるくらいには。」
今さらその話題を出さないでほしい。
「自分のこと否定されたみたいで辛いよなぁ。」
えっ?!
「どうして。」
なんで、私の気持ちがわかるんだろう。
「俺。真逆の理由でフラれたことあるから。」
へ?!
「自分より、料理が上手い男は嫌なんだって言われたわ。」
なんて、贅沢な。

「西原。取引しよう?」
取引??
「料理、俺でよければ教えてやる。ただし、条件がある。さっき、なんでもするって言ったよな?」

確かに言ったけど……
「身体で払うとかは無理です!!!」
「んな、鬼畜じゃねぇよ。そんなに飢えてないし、好きで付き合った女じゃなきゃやらない。」

そう言って、彼の出した条件は3つ
・営業で忙しい、彼の部屋の料理以外の家事をすること(要するに家政婦)
・会社では、内緒にすること
・彼を好きにならないこと

「期間は?」
「お互い、彼氏彼女もしくは好きな人ができるまで。または、西原が教えてもらう必要がなくなるまで。」

こうして、私たちの取引は成立した。
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