王太子の揺るぎなき独占愛




「殿下……」

 サヤはその端切れを胸に抱きしめた。

 もう、涙や嗚咽をこらえることはできない。

「レオン……レオン……っ。ご、ごめんなさい」

 サヤは体を丸め、何度も謝罪の言葉を口にした。

 笑ったり泣いたり、自分はどうしたんだろうと思いながらも涙が止まらない。

 サヤの心にあふれる感情はレオンへの申し訳なさだ。

 レオンは国を守るために危険な場所に駆け付け、一刻も早い解決に向けて奮闘しているはずだ。

 大勢の騎士を率いる責任はとてつもなく大きく、レオンはそのプレッシャーに耐えているに違いない。

 それなのに、自分はいったいなにを考えた?

 サヤは自分を殴りたくなる。

 レオンを信じることなく、万が一のことばかりを考えてぐずぐず悩み、毒に頼ろうとまで。

「本当に、私って……情けない」

 王妃になる身なのだ、いい加減、強くなって腹を括らなければ。

 サヤはひくひくとしゃくりあげながらも、手の甲で頬の涙をごしごしと拭った。

 そして、手の中にあるいくつものビオラをしばし見つめた。

「これだけ努力できたんだもの、まだまだがんばれる」

 自分を叱咤するようにそう言って、勢いよく立ち上がった。


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