王太子の揺るぎなき独占愛


 それはルブラン家に生まれたときから決められた運命ともいえ、拒むことはできない。
 ルブラン家の分家の中でも末端の家に生まれたサヤもその例外ではなく、森に関するあらゆる知識を詰め込まれてきたが、彼女が十歳になる頃には大人顔負けの知識を得ていた。
 広い森を横断するには馬の脚でも四半日近くかかるほど広い森のどこになにがあるのかを記憶し、薬草の収穫時期や効能はもちろん、生育具合を常に頭に入れている。
 王家の森に関して、ルブラン家の女性の中でも秀でた知識を持つサヤは、生涯を森の管理をしながら過ごしたいと願っている。
 
 十八歳になる今日まで、森のこと以外興味を持つことなく育ったせいか、森以外の世界で生きることに不安を感じているのもたしかで、これからもずっと、両親とともに森の管理をしながら生きていきたいと思っている。
 
 そして、ルブラン家にはもうひとつ重要な役割がある。
 それは、王太子が王に即位する際、ルブラン家の女性の中から王妃が召し上げられることだ。

 これに関しては、自分には関係のないことだとサヤは思っている。
 ファウル王国の王妃となる女性は、ルブラン家から選ばれると決められているが、現王はまだまだ若く健康で、あと十年は在位が続くと思われる。
 
そうなれば、王太子が王位に就くのは早くても十年後。
 そのときサヤは二十八歳だ。
 世継ぎを産まなければならないことを考えれば、現王太子が王位に就く際に選ばれる王妃に、サヤの名前が挙がることはないだろう。


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