王太子の揺るぎなき独占愛



 これまでも、王太子が王位に就くことが決まると同時に選ばれた王妃の年齢はすべて十代の女性だった。
 たとえ王との年齢差があったとしても、王妃はルブラン家の十代の女性というのがこれまでの慣例となっている。
 だから、サヤが現王太子の結婚相手として選ばれる可能性は、ない。

 あと十年生まれるのが遅ければ、サヤにもその機会はあったかもしれないが、サヤは王妃になりたいと思っていないせいか、それを残念だとも思っていない。
 ルブラン家の本家からかなり離れた分家の家長であるサヤの父親も母親も、サヤを王妃にと願ったことはなく、つつがなく健康で暮らせればそれでいいと考えている。

 両親からのたくさんの愛情と、森で過ごす優しい時間に育てられたサヤは、おとなしいながらも朗らかで明るい女性に育った。
 戸外で体を動かすことが多く、体も引き締まり健康的だ。
 まるで太陽の日差しのように朗らかなサヤは、王族からも好かれていて、病気になれば薬草を届けてくれるサヤのことを待ちわびる者も多い。

 王族専属医師の指示に従い薬草を調合するのだが、医師よりも知識が深い彼女は医師から薬草の選択を一任されることも多く、そのときには自ら城に出向き、城内で薬を調合することもある。
 
最近では王太子のレオンが剣の訓練中に腕を切り、消毒効果のある薬草を城に届けた。
 腕を切ったといってもほんのかすり傷。
 王太子でなければ呼び出されることもない程度の傷だが、用心には用心をということで治療を任されたのだ。

< 5 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop