王太子の揺るぎなき独占愛
国王ラルフの王妃シオンへの強い愛情は有名だ。
結婚して二十五年がたち、四十八歳になった今でもシオンを溺愛している。
それまでの慣例にならい、ラルフが即位する際にルブラン家の女性の中から選ばれたのがシオンなのだが、幸いにもふたりはひと目で恋に落ちた。
自分の意志など考慮されることなく、前王が決めた女性と結婚しなければならない王太子としての運命。
それに抗おうとしたこともあったが、国の混乱を招くかもしれないとなれば、軽々しく思いを口にすることもできなかった。
騎士団での鍛錬のおかげか逞しい体と屈強な精神力を身につけ、いつも冷静なその姿は国民たちからの信頼も厚く、その信頼を裏切ることはできないと、思っていた。
決められた女性と結婚し、国のために力を尽くすしかないだろうと、あきらめにも似た思いで生きていたラルフだったが、運命は彼を極上の政略結婚へと導いたのだ。
「シオンが淹れた紅茶は本当にうまいな。このクッキーもシオンが用意してくれたのだろう? 甘さの加減がちょうどよくていくらでも食べられる」
王宮のバルコニーの椅子にラルフとシオンは並んで座り、のんびりと午後のお茶を楽しんでいた。
本格的な冬が近づき、最近では部屋の中でお茶を楽しむことが多いのだが、スッキリと晴れ上がり、日差しがたっぷりと注ぐバルコニーはとても暖かい。