【完】そして、それが恋だと知った日。
声をかけられたことにびっくりして、ぱっと横を向くと。
苑田くんがじっと私の方を見ていた。
呼ばれたから向いたのに。
苑田くんは私を見つめたまま口を開こうとはしなかった。
な、なんだろう……。
苑田くん、かっこいいし顔綺麗だから。
そんなに見つめられると恥ずかしいんだけど。
透き通った瞳はじっとこっちに向けられていて。
顔に熱が溜まっていくのが分かる。
逸らしたいのに、それを許さない瞳に。
意味もなくしばらく私たちは見つめ合っていた。
「なんの映画見るの?」
「……え。」
「映画、なに見るのか気になって。」
「え、えっと確か恋愛モノだった気がする。」
「……そう。」
そう言った後、何事もなかったかのように苑田くんは。
また前を向いて歩きはじめた。
……なんだったの、今の。
しかも聞きたかったのって映画の事!?
ならそんなに見つめなくったっていいじゃん。
苑田くんって、不思議。
何考えてるか全然分からない。
ちらり、横顔を見ようと思って横を向いたけど。
身長が高すぎてみる事が出来なかった。