【完】そして、それが恋だと知った日。

心の中に黒い感情が芽生えていくのが分かる。
汚くて醜くて歪で。
どろどろぐちゃぐちゃの。
誰にも見せたくない、嫌なもの。


こんなもの持ってるって伊澄くんにバレたくない。
ふたりの光景から目を逸らして。
机にうっつぷす。


私、嫌な子だなあ。
あの子、伊澄くんの事好きなのかな。
やだな、とられたくない。


でも気持ち分かる。
伊澄くん、いいよね。
優しいし、気配りできるし。
男子っぽくないし。
……でも嫌だ。


伊澄くんの良さは私だけ知っていればいいのに。


……伊澄くん、好きな人いるのかな。


自分の気持ちにいっぱいいっぱいで。
伊澄くんが好きな人いるのかとか、付き合っている人がいるのか、とか。
そういうの全然知らなかった。


そう思うと私、もしかしたら失恋するのかも……。
どうしよう……。


誰かを好きになるの、初めてだから。
そういうの全然分かんない。
自分から告白なんてできっこないし。
でも、ずっとこのままなんて。


伊澄くんを誰かにとられるんじゃないかってひやひやして。
伊澄くんが誰かを好きで。
他の誰かに微笑んだり、撫でたり、手を繋いだり。


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