【完】そして、それが恋だと知った日。

「リップ。」


「へ?」


「リップ、かわいい。」


「えっ、……あ、ありがとう。」


反射的に口に手を当てる。
気付いたんだ……。
よく見ないとついてるか分からないくらいなのに。
観察眼も優れてるなんて。
すごいなあ、苑田くん。


コースの説明を聞いた後。
30分の簡単な模擬授業を受けた。


学校の説明より分かりやすいし。
つまづいてた現在進行形も理解できた。
ここ、分かりやすいなあ……。


下心できたけど、本当に通っちゃおうかな。
伊澄くんと同じ高校行きたいし。
やる気、出てきたかも。


模擬授業を終えて、数学コースが終わるのを待っていると。
苑田くんが自販機で買ったオレンジジュースを私へ差し出した。


「あ、お金……。」


「いいよ、ジュースくらい。」


「え、でも。」


「こういうのは、黙って受け取るもんだよ。」


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