君のことは一ミリたりとも【完】
流石に俺に黙っていられなくなり、今まで溜め込んでいた不満が一気に溢れ出した。
「つーかさぁ、そんなボロボロでブッサイクな顔、周りに晒して申し訳なく思わないの? 気分悪くなるんだけど」
「じゃあ関わらなきゃいいでしょ」
「周りに迷惑かけてんの見てられないって言ってるんだけど」
「だからアンタに関係ないじゃん」
「関係なくないから」
その言葉に「は?」と顔を上げた彼女に言い放つ。
「男にフラれたぐらいで泣いてんじゃねぇよ」
その瞬間、再び彼女の目から涙が溢れ出してぎょっとした。
周りからまた変に注目を集め始めてしまったため、河田さんの腕を掴むと道の端の方へと移動する。
まさか自分の言葉でこんなに泣くとは思わず、らしくもなく取り乱してしまった。
しかし暫くして彼女は自分の言葉ではなく、恋人"だった"あの男のことを思い出して泣いているのだと察した。
するとまた、自分で自分を追い詰めたように胸が締め付けられた。
「(何なの、そんなにあの男が好きなわけ……)」
いつからこんなに弱い女になってしまったんだ。
それとも、あの男に弱くさせられたのか。
「泣かないでよ、河田さん」
「っ……うる、さい」