君のことは一ミリたりとも【完】



突然口を開いた聖に「ん?」と意識を傾ける。


「彼女出来たって話。順調?」

「んー、まあまあ、かなぁ」

「あれってさ、河田さんだよね」

「っ……」


思わずお昼ご飯に食べたものを戻しそうになった。そのような衝動は何とか抑え込み、驚いた目で聖のことを見つめた。


「おま、は……何で?」

「何となく分かるよ、この間家に来た時に爽太と河田さんの様子おかしかったし」

「そ、っかー……そこかぁ」


まさか聖に当てられるとは。しかしコイツも俺と同様に周りの人間を観察するのに優れていたのを思い出した。
あまり簡単に人を侮ってはいけない、そう肝に銘じながら背後で電話をしている彼女のことをこっそりと盗み見た。


「ちなみに優麻ちゃんは?」

「気付いてないと思うよ」

「だよね、バレてたら亜紀さんに殺されてた」


多分亜紀さんも優麻ちゃんには自分の口から伝えたいと思うし。
それにしてもかなりの秘密を知った癖して聖の様子は普段と何も変わらないように見える。


「聖は吃驚しなかったんだ?」

「んー、したよ一応。でもそうなんだって」



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