君のことは一ミリたりとも【完】
元からあまり他人に興味を持たない彼からしたら俺の恋愛事情なんてどうでもいいことなのかもしれない。
しかし聖は自分の赤ん坊のほっぺたを指先で突きながら昔を懐かしむように目を細めた。
「でも、そうなるのが一番だなって思ってたから」
「思ってたって、いつから?」
「高校の時から?」
「え、お前そんなこと思ってたの?」
俺でさえも彼女への気持ちに気付いたのはこの最近のことだった。
彼は飄々した態度で「うん」と頷くと、
「だって爽太、明らかに河田さんに対してだけ態度違ったし。好きじゃなくても特別なんだと思ったよ」
「マジかよ、俺そんなに分かりやすかったのかー」
「まぁ、隣にいた俺だから分かったのかも」
ふっと柔らかな笑みを浮かべた聖は「そっか、爽太とね」と小さな声で呟いた。
「大事にしてあげてね。奥さんの親友だから」
「……うん、それはもう」
「はは、爽太結構ベタ惚れだね」
確かに、こんなに恋愛にのめり込むのっていつぶりだろうか。いや、初めての経験かもしれない。
いつも誰かと付き合ってはいつかくる終わりを待っているような恋愛しかしてこなかった。だけど今はその"終わり"のことを考えたくない。