クールな社長の溺甘プロポーズ
「でもいいんですか?私、料理も洗濯もほとんどしませんけど。仕事はもちろん続けたいし、ひとり分の家事すらもろくにできませんし」
「あぁ。仕事は続ければいいし、家事が出来ないならハウスキーパーでも雇えばいい」
く、くそっ……一歩も引かない。なんて男。
思わずチッと舌打ちをする私に、こちらの意図などお見通しとでもいうかのように彼は口角をかすかに上げた。
その反応が悔しくて、ふん、と顔を背け窓の外を見る。
いつもは電車で向かう会社までの道のりは、車からだとなんだか見慣れない道に感じられた。
そしてマンションから10分ほど走ると、見慣れた景色のところで車はゆっくりと停められた。
「着いたぞ」
その言葉と同時に、先に車を降りた大倉さんは乗るとき同様に助手席のドアを開ける。
「……どうも」
渋々エスコートされる形で車から降りれば、そこは確かに会社のあるビルの目の前。
行き交う人々は、珍しいものを見るような目で私と車、そして大倉さんを見ている。
あぁ……変に目立ってる。すごく恥ずかしい。
男に高級車で送迎させるなんて、どこのセレブだと自分でもツッコミたくなる。
「あぁもう、この車と大倉さんは目立つ!早く行ってください!」
「悪かったな。じゃあ今度は違う車に買い換えてくる」
「そこまではしなくていい!」
冷静なトーンで言う彼に、本気か冗談か判断できない。けど、本気でやりそうだから怖い。