クールな社長の溺甘プロポーズ



「言っておきますけど、帰りも迎えに来たりしないでくださいね」

「それは、遠回しに『迎えにきてほしい』という意味か?」

「ストレートにそのままの意味です!!」



変に深読みしようとしないで!

周囲の視線も気に留めず声を大きくして言うと、私はその場から逃げるように足早にビルへと入って行った。



あぁもう、朝から疲れた……。



ていうか、本当になんなの?あの人。

まさか本気で結婚とか言ってる?いや、ありえないでしょ。

けどじゃあなんのために朝から迎えに来たりして……あーもう!考えてもわからないし考えるのやめる!



「……あ」



ふと気づく。渋々ながらもせっかく送ってもらったというのに、お礼のひとつも言わなかったこと。

せめて送ってもらったことに対しては、『ありがとう』のひと言をいうべきだったかも。



文句しか言えなかった自分を少し後悔して、そういえばとスマートフォンを取り出す。

昨日はつながらなかったけど今日はお父さんに電話つながるだろうか。



どういうことか、今度こそ問いただしてやる。

そう電話をかけるけれど、今日も呼び出し音のみが続き通話ボタンが押される気配はない。

出ない。昨日の今日だし、警戒してるな。

会社に乗り込んでやろうか、とイライラしながらスマートフォンを鞄にしまった。



「お、いたいた。おはよ、澤口」



すると、背後から不意に声をかけられた。

振り向けばそこには、青いワイシャツと黒いジャケットに身を包んだ、茶髪の彼……米田さんの姿があった。


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